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建築家インタビュー
西沢立衛
西沢立衛/にしざわ りゅうえ
西沢立衛建築設計事務所
1966年 東京都出身
これからの大量生産住宅と超高層
――ミサワホームは工業化住宅を中心に扱うハウスメーカーですが、建築家は通常オーダーメイドで一品生産の仕事をしています。西沢さんは、大量生産住宅には興味を持たれていますか。
西沢
大量生産住宅というのはすごく興味があります。建築というものはやはり工業製品的側面があるのです。ただ、時代は変わってきていて、大量生産、工業生産の意味もこれからさらに変わっていくと思います。戦後の時代は、都市に住む日本人はみんな家族構成が似ていて、生活も似ていて、ライフスタイルが共通していましたから、ひとつの住戸プランで百万軒つくっても、ある程度意味があったと思います。でもこれからは、家族像は多様化し、いろんな家族、いろんなライフスタイルが出てくる。子供のいない家族、親のいない家族、女性2人のカップルで暮らす家庭、もしくはグループコミュニティのような家庭、いろんな形が出てきています。昔のようにお父さんが外で働いてお母さんが専業主婦で子供を3人育てるという核家族的な家族像は、標準的ではなくなりつつある。だから、大量生産、工業生産ということも、多様化というこれからの時代の問題にどう立ち向かってくかということは、大きな問題になると思います。
――超高層のマンションには興味をもたれていますか。
西沢
すごくあります。僕はタワーマンションというものは、良い建築的解答がまだ出ていないと思うのです。景観の問題がひとつあって、あれが建つとどの地域も一緒っていう雰囲気が周りに出来てしまうんですよね。ですから、場所にあった建ち方ができるかどうかということは、タワーマンションのこれからの課題だと思います。それから建物の中の問題、たとえば動線計画ですが、自分の家に行くのにエレベーターを使いますが、あれもあまり素晴らしくないと思います。閉鎖的な狭いエレベーターの密室の中でみんなじっと息を殺して立っているのは、つらいものです。ご老人や1人住まいの女性などは、外に出るのがなにか億劫になってきて、インターネットでぜんぶ用事を済ませてしまうようになっていくのではないかと思います。
――20階でもけっこう時間かかりますからね。
西沢
快適性というのは、家の中の間取りがうまくいっていればいいというものではなくて、その外もすごく重要だと思うのです。そういう意味でも、廊下やエレベーターといった共用部分は重要だと思います。
僕らの生活は、家の中だけで完結しているものではなくて、道路を歩いて駅に行き、学校に行き、公園や川辺で散歩をして、劇場で演劇を見て、図書館やカフェで読書して、というように、我々の生活というのは、4LDKの中では納まっていないと思うんです。それは街全体に広がっているのです。そういう意味では、部屋の中だけが快適というのではなくて、家を囲む庭とか、道路とか、街全体が豊かで快適だったら、本当に素晴らしいと思います。人間というのは、家だけに住むのではなくて、環境に住むのです。だから、建築をつくるといっても、きれいな部屋をつくって終わりではなくて、家や庭、町も含めた魅力ある環境をつくるということが、すごく重要だと思います。
地域という財産
――金沢は観光地として有名で、そこに美術館をつくることによってさらに盛り上がったわけですが、たとえば、非常にアクセスが悪くてマイナーな都市であっても魅力のあるものに変えることができると思われますか。
西沢
インターネットやコンピューターの影響で、行かないでも分かる美術というのが増えてきました。それはたとえばインターネット上のアートとか、もしくはファックスや電子メールを使ったアートとか、行かないということがひとつのテーマになっているアートがある。そういうものが出てきて逆に、行かないと分からないアートの重みも増してきていると思うんですね。行かないとわからない作品とか、その場所にしかないものとか、そういういわば交換不可能なものの価値が増していると思います。たとえばモネの「睡蓮」は、現在の技術であればヨーロッパまで行かなくても、精度のいい画像を日本で見ることができる。でも、バイエラー財団美術館でどのように展示されているかという環境と「睡蓮」との関係は、行かないと分からないことで、行けばすぐにわかることです。そして、その「睡蓮」の空間を好きになった場合は、一度行ったら終わりということではなくて、帰ってきてしばらくして、また体験したいと思う。直島も、行くことについては便利なところではありません。行くだけで半日かかりますから。でもそれが逆に直島の魅力にもなっている。最近、僕らの事務所を訪ねて来る外人の多くが、これからどこ行くの?と聞くと、多くの人がこれから京都と直島に行く、というのです。直島というところはたしかに遠いのですが、逆にその遠さによって、都会とはぜんぜん違う環境を持てているという気がします。東海道新幹線沿いの街のような、均質化や都市化が起きていない、行ってみないと体験できない自然の豊かさ、地域に根ざした文化の豊かさ、そういう交換不可能性というか、魅力が今も保存されている。地方都市が遠いといっても、世界的に考えれば、日本そのものがすでに遠いので、わざわざ日本まで来た人にとっては、東京も十和田も金沢もたいした違いはありません。その地域独自の魅力があれば人は訪れると思います。十和田も、距離的には遠いですが、そのかわり自然も街もたいへん美しく、歴史的なもので、江戸末期、明治期につくった都市の基盤が、今もそのまま残っています。昔から日本人がどうやって街をつくってきたかという雰囲気が、そのまま残っています。春夏秋冬の自然の移り変わりも本当にきれいです。そういう地域の財産というものは、これからますます貴重になっていく時代だと思います。
豊島美術館, 2010
外観
設計=西沢立衛建築設計事務所
©西沢立衛建築設計事務所
豊島美術館, 2010
内観
設計=西沢立衛建築設計事務所
©西沢立衛建築設計事務所
十和田市現代美術館, 2008
外観(全景)
設計=西沢立衛建築設計事務所
©西沢立衛建築設計事務所
十和田市現代美術館, 2008
外観
設計=西沢立衛建築設計事務所
©西沢立衛建築設計事務所
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